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新エネの業者です。日々徒然。

地熱発電が日本で進まない、ドロドロした本当の5つの理由

 こんにちは。太陽光発電等を中止とする固定買取制度がスタートして数年経ち、日々新エネルギーのニュースが流れるようになりましたね。それ自体は素晴らしいことです。ところで、日本は世界3位の地熱大国なのにも関わらず、導入は進んでいません。今日は知る人はしっっている導入が阻まれる理由をシェアします。

地熱発電が有望な場所は温泉が観光の目玉、よって地域の温泉地が猛反対している

時々ニュースになっていますね。草X温泉などはその際たる例です。地熱開発の研究者が、

「既存の温泉には影響はほぼない」

「そもそも温泉を入浴に使っているあなたたちと違って、一度摂取した温水は地下にそのまま戻すんですから、むしろ入浴用温泉の方が影響が大きい」

などと言ったところで

「日本古来の温泉文化だ」

「ほぼない、ってことは少しはあるってことだ!」

と堂々巡りで、あーだこーだと地元の人々、特に温泉組合は聞く耳を持ちません。アポを取ると無視、または、「今はシーズンで忙しいから冬に戻ってこい」的にかなり先まで会わないことを明言されたりします。要は門前払。

開発業者が乱立するも素人集団でどっちにもいかず

 太陽光発電がここまで導入が進んだのは、基本的に「資源が太陽」だからです。平均日照時間は誰にも分かりやすいコンセプトです。広い土地があればそこを買い取って、ポンポンとパネルを置く。晴れていれば、「あー、今日は発電できる」曇れば「今日はイマイチね」とわかりやすいので参入障壁も低い。 一方、地熱の資源は地下の話ですからちゃんと調査しなければわかりません。しかも、温水温度と湯量、または蒸気を、「どのくらい掘ればどのくらいの資源量がある」と専門家が測定して初めて資源量が判明するものなんです。にもかかわらず、

「このへんは温泉が出ますから、ホラ、ここ掘れば地熱発電できますよ」

と真面目顔で土地を売る不動産屋さん(ブローカー)が、特に九州一帯で乱立。確かに地熱が豊富な地域とはいえ、『ここ掘れワンワン』式に掘りゃあなんとかなるわけじゃありません。無責任な不動産ブローカーと、そんな上手い話にのってしまう都会の事業者がワサワサ入り乱れて、野球場のチケット売り?を彷彿させます。一体何のビジネスしてるのかわからないカオス状態に。特に九州がそうなっているのです。

地元民、都会の民が乱れ飛ぶカオス

 カオスは不動産ブローカーと都会の素人さんだけじゃあありません。地元の業者は地元の開発だから仕事が欲しいのにもかかわらず、都会の投資家は全国区の工事業者を連れてきて開発をします。なぜ?理由は簡単。工事自体が「地熱開発プラントの設計施工」という技量が必要で、「地元の公民館の電気工事」程度の業者には歯が立たないからです。技量も大規模工事の実績もなく、親子二人と従業員2名、みたいな「XX電機有限会社」が、

「俺んところで何でもできる!」

と叫んでも、所詮は地元の業者。設計できない、周りの業者と頭を付き合わせて考えても太刀打ちができないのです。もちろん、地元民が作るファンドなどが事業主に成る場合は、こういう地元業者の勉強にもなるし、ということで無理やり頼もうとするでしょう。

 しかし、ここも太陽光発電と違います。パネルの枚数で投資額が変わる、屋根の大きさで数十万からアリ、というのとはワケが違います。発電機そのものが最低数千万円以上。ちゃんと井戸を掘らねばならないので通常数億単位の開発になる地熱開発。やはり都会の事業主にとっては親子家業の業者では不安、信頼おける業者からのルートで、となります。そして、この図式をよく思わない地元民が、議会を使ったり周辺住民に嫌がらせ反対をさせたりします。この地方のイジメが厄介です。それが次の4つ目のポイントです。

地方の問題を体現

 地方再生などという美しい言葉とは全く異なるイジメ現象です。実際に発電所が稼動すれば、特定目的子会社(いわゆるSPC)は地元の登録ですからは地方には税収が入りますし、20年に渡り雇用が生まれることになるわけですから、全く地元にお金が落ちないなんてウソです。が、とにかく地元の人々の反対は、町役場にとっては無視できないんです。公務員ですし、地元の人々の代表ですから。

「あー。XX町の福本さん(仮名)の了解はとってや。あの人の所、温泉でとるしな。使ってないみたいやけど。。。福本さん了解線と役場では工事の申請承認できんわ」

みたいな返答が。そして福本さんに了解を取りに行くと、

「俺は反対や!温泉枯れたらどうしてくれんねん。。とはいえ、あんたのところも困るやろうから、まあ考えんでもないけどな」

つまり、袖の下次第、ってことですね。袖下の形は色々です。

「あぁ、あと工事はXX電機に任せてな。ウチの取引先や。仕事回してやってな」

というバーターが提示されます。

 仮に福本さんのバーターが成立したとしましょう。すると、福本さんは、地元の人々の名士ですから、周りにこの話を共有します。そこはジモトのココロ。やっぱり先祖代々隣りに住んでる人の方が大切なんです。XX電機も、仕事をゲットして嬉しいので周りが知ることに。すると、それを気に入らない、または俺も俺も的な人々がワサワサ反対をします。こうなってくると、福本さんを日頃からよく思っていない人、XX電機のライバルなどは、反対急先鋒となり、『地元協議会』みたいな組織が自然と出来上がります。都会の事業者は、一人一人対応なんてしてられませんから、まあ、ここに承認してもらえれば、みたいに思うんですが、さあ、ここからが長いですよ〜。みなさん、反対、検証、がお仕事ですから。発電が稼働したらこのお仕事は基本なくなりますからね。

「大学の教授呼んでこい。そして地元に説明せよ」(地方の大学を指定)

「地元のメリットを明確にせよ」(ついでにどんなお仕事にありつけるの?)

「あ、でも来月は町議会があるからお休みね」(町議会とか青年委員会は何より大切な契り)

。。。といった具合で、アレアレ?俺たちは、一体なぜこの地元勉強会(飲み会を含む)組織を相手に毎月九州に来ているんだろう。。。なんで地元大学教授接待してるんだっけ? ところでいつ発電所スタートできるんだろう??という終わりのないループに突入です。チーン。

そして何も始まらない

 そんなこんなしているうちに、九州一帯は太陽光発電は着々と進み、九州電力は、これ以上新エネルギー(特に太陽光)を受け入れたら、昼間の受入れ電力がオーバーしてしまう、ということで、一時買取を中止しました。ニュースを見た方も多いと思いますが、九州電力に続き、北海道電力なども「俺らも!」って感じで追随しましたね。9ヶ月後に再開するものの、新エネルギー業者に対して「開発しないなら申請取り下げ」的な措置を厳しくし始めます。

 一方、九州電力の子会社は、10年間も暖めた大規模地熱発電をついに開始しました。中小はみんなで足を引っ張り合っているのに、やはり電力会社。しっかり進めてたんですね。大分県熊本県の境にあるこの発電所は、かなり山の中です。さて、この九州電力子会社が始めた大規模地熱発電所の隣の山を、東京の投資家が高額で手付を打ちました。隣なら地熱資源が豊富なのは確実、しかも隣だから開発に文句は言われないはず、というつもりだったようです。が、フタをあけてみたら、あまりにも山の中で、九州電力子会社が使っているものを使わないかぎり、道路は自分で何キロか舗装してダンプが通れるようにしなければならないし別の山から電線を引っ張ってこなければならないことが判明。いくら高価格での買い取りが前提とはいえ、これでは山一つ開拓ってしまう。つまり九州電力子会社に頭を下げて「道路と電線、一緒に使わしてくださいっ」とお願いしなければならないのです。九州電力子会社が「ハイハイどうぞ」というモチベーションはゼロですから、この交渉うまくいかないことはあきらかです。

 みなさん、ニュースでは「なぜ開発が進まない?」と時々やってますが、ニュースではほんの表面の部分を映し出すだけです。実態は、こんなもんです。東Xなどの大手は、日本じゃ先が見えないので、海外で一生懸命地熱開発プラントを作って発電しています。地熱大国日本は、いやがらせ大国でことなかれ主義。

「なーんにも動かない。もう一度、黒